IT法務関連のトピックスです。随時更新していきます。
個人情報保護法の施行により、個人情報を委託先に委託する場合は、委託先がきちんと個人情報を取り扱っているか、きちんと監督しなければならなくなりました。 そうはいってもいきなり、個人情報がきちっと取り扱われているかどうか監督(監査)を行わせてくれといっても、委託先にも事情がありますので、最悪の場合拒否されることも考えられます。
そうならない為にも今後は個人情報が含まれる業務を委託する場合、
等の条項をあらかじめ設けることより、法的リスクにも対応していく必要があります。
個人情報保護法22条
個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。
また経済産業省のガイドラインでは、個人データの取扱を委託する場合に契約に盛り込むことが望まれる事項として以下の内容があげられています。
偽装請負とは実態が労働者派遣なのに請負契約で業務を請負ものです。
昨今、偽装請負を指摘されることが多くなり、企業のイメージダウンにもつながりかねません。
まず派遣と請負の違いについて説明すると以下のようになります。
【労働者派遣とは】
「労働者派遣」とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。」(法2条1号)とされています。
<特徴>
雇用主と使用主が分離している。
<労働者への指揮命令権>
使用主の指揮命令により作業を実施。
派遣法に基づき派遣事業の許可の許可が必要。
【請負とは】
「請負は当事者の一方が或仕事を完成することを約し相手方がその仕事の結果に対してこれに報酬を与えることを約するに因りてその効力を生す。」民法632条)とされています。
<特徴>
請負事業者が自らの裁量と責任の下に仕事の完成にあたり雇用主と使用者は一致する。
<労働者への指揮命令権>
請負事業者は自らの指揮命令を実施。注文主から労働者への指揮命令はない。
IT業界では昔から客先へ常駐の形で客先の指揮命令のもとで業務を遂行する形態が多く行われてきました。
それ自体は悪いことではありませんが、実態は派遣であるのに、請負契約で行われている場合は、違法(偽装請負)になります。あまりに一般的に行われてきたため、一部の管理者の中にはそれが違法であることに気がつかない人さえいますので注意が必要です。
【偽装請負とは】
労働者派遣契約を締結せず、業務請負と称して労働者派遣事業を行うことです。違反すると、派遣法違反として懲役又は100万円以下の罰金などの罰則をうける恐れがあります
【適切な請負といえるためには】
適正な請負であるといえるためには以下の様な要件を満たす必要があります。
「参考:労働者派遣と請負の区別」
労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準
(昭和61年4月17日労働省告示第37号)
第一条 この基準は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「法」という。)の施行に伴い、法の適正な運用を確保するためには労働者派遣事業(法第二条第三号に規定する労働者派遣事業をいう。以下同じ。)に該当するか否かの判断を的確に行う必要があることにかんがみ、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分を明らかにすることを目的とする。
第二条 請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であっても、当該事業主が当該業務の処理に関し次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする。
イ 次のいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
ロ 次のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
ハ 次のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。
イ 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。
ロ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。
ハ 次のいずれかに該当するものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
第三条 前条各号のいずれにも該当する事業主であっても、それが法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が法第二条第一号に規定する労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れることができない。
契約書を締結する場合雛形を使われる方がいますが、そこに危険があることに気がついている人は意外と少ないかもしれません。
ビジネスの社会では契約はビジネスを実現するための権利義務を明確にするために締結されます。すなわちビジネス毎に重要なポイントや必須事項は異なるはずです。市販の契約書等はごく一般的なビジネスいわば「たとえ話」をベースに必要な事項をあげたにすぎません。
たとえ話とはいっても契約内容によっては、記載する内容が既に決まっていて、雛形で十分な契約は多く存在します。そのような場合、雛形の使用には合理性があるといえます。
ではシステム系の契約書で雛形の使用はどうでしょうか。
残念なことにシステム系の契約書は雛形の使用に向いている業務とはいえません。理由はいくつかありますが一番大きな理由としては、システム開発などは契約時点ではなにを作るか明確でないという大きな問題です。そのためリスクの高い契約であるということを理解して、リスクプランニング(リスク対応の工夫)とパフォーマンスプランニング(履行円滑化の工夫)が十分考慮する必要があります。市販の雛形ではこのような個別対応は難しいといえます。(瑕疵担保責任と損害賠償等工夫が必要です)
また契約書は発注者側、受注者側それぞれどちらの立場で書かれたかによって、その内容は大きく異なります。当然雛形も発注者か受注者かどちらかの立場で書かれています。受注者側の立場で書かれた雛形を用いて契約を締結した場合、発注者側の権利はかなり制限される形になっているはずで、そういう前提を知らずに不利な契約を結んでしまう可能性があります(逆もあります)。
契約書はビジネスそのものを規定したものです。それに基づいて権利・義務が発生するのです。いままでは、ある意味契約外の信頼関係をベースをビジネスが行えてきました。しかし今後は契約書ベースのビジネスに移行していきます。もし雛形で契約を締結する場合、『雛形だから大丈夫』ではなく、大変危険があるもの』だとということを認識して使用する必要があります。
下請代金支払遅延等防止法(下請法)は、下請取引の公正化・下請事業者の利益保護の目的で制定されました。
もともとは、製造業における製造委託や修理委託等を対象としていましたが、
2003年に改正され情報成果物作成委託・役務提供委託
(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に係わるもの)が取引対象に加わりました。
つまり、システム開発やサービス提供についても下請法が適用される可能性が出てきたのです。
【適用事業者は】
下請法が適用される親事業者、下請事業者の定義は以下のとおりです。
親事業者 下請事業者
パターン1 資本金3億円超 ⇒ 資本金3億円以下
パターン1 資本金1000万円超3億円以下 ⇒ 資本金1千万円以下
例えば、下請け事業者の資本金が2千万だったとして、ある開発プロジェクトにおいて、親事業者の資本金が2億円でしたら下請法の適用がありませんが、資本金が4億円の親事業者なら下請法の適用があります。
また資本金が1千万以下の下請事業者を使う場合、自社の資本金が1千万円を超えていた場合、下請法が適用されることになります。
【親事業者の義務と禁止事項】
下請法が適用されますと、親事業者には義務と禁止事項が適用されます。
■親事業者に課される義務
書面の交付義務により親事業者は発注時に口約束でなく発注書面を交付する義務が
あります。また支払期日も発注時に定めなければなりません。支払期日は納入された
物品の受領後60日以内でなければなりません。
■親事業者に課される禁止事項
<>内は禁止です。
【違反した場合】
50万円以下の罰金や、改善勧告、勧告の公表が行われます。